お母さん、わたしゆずになりたい
横浜Kアリーナこけら落とし公演、YUZU SPECIAL LIVE 2023 HIBIKI。世界最大級のアリーナのド真ん中で、JPOPのド真ん中を走り続けてきた二人が演じる、それはもう最高級のエンターテイメント。すごかった。最高だった。そんな言葉しか出てこない。
わたしがゆずと出会ったのは小学生のころだ。
親がCDを借りてきて、なんとなく存在を知った。けれどずっとファンとして曲を聴いてきたわけではなく、繰り返し聴き込んだアルバムは2枚ほど。それ以外の曲は有名なものしか知らない。
それでも、「ゆず」というのは、わたしのこころの真ん中にあった。
紅白に出ていればテレビの前を陣取った。卒業式でも栄光の架橋を歌ったのを覚えている。家族でドライブするときは、いつもBGMにしていた。
「JPOPのスタンダードはこれなんだ」と思っていたし、いつでも帰ってこれる心のふるさとのような、そんな場所だった。
ゆずはいつもシンプルで、淀みなく、明るく素直で、まっすぐに愛を伝えてくれる。なんとなくそんなイメージ。
それが昨日、ライブを見て、はっきりした。「ゆず」が与えてくれるのは、ハッピーであたたかくて強くて優しい、エネルギッシュな生命力なのだ。
感動が止まらなかった。開演後すぐ演奏された「ヒカレ」、弾き語りステージのまっすぐな歌声。"故郷"と"音楽"の文字が重なって「響」という文字になる演出には鳥肌が立った。
次いで繰り出されるメドレーは、「あ、これメドレーだ」と気づくころにはその世界に引き込まれていて、平和を願うこころに胸を打たれた。
ロボットがキャラクターとして登場する"HIBIKI PARTY"では、そのサウンドの熱量はもちろん、踊ったり走り回ったり、こっちまで叫び出したくなるみたいなエネルギーがあった。
ゆずははじまりかけた秋を一瞬で夏に戻してしまう。観客のコールアンドレスポンスで爆発的な盛り上がりを見せた「夏色」は、まちがいなく二人の代表曲で、みんなの大好きな曲で、楽しい気持ちが会場から溢れていた。
そして終演後、アンコール。美しき栄光の架橋。みんなで一番を歌って、泣きそうになって、ゆずの二人の歌声にまた泣いた。気づけば2時間半が経っていた。
わたしは公演中ずっと、演奏を聴きながら、「ゆずになりたい」、と思っていた。
正確には、あれだけのエネルギーを、たくさんの人に届けられる人になりたい。音楽が好きだ。どんな形でもいい、笑顔を届けたい。夢物語でも、夢が見られるならいいなと思った。
帰り道、母親に「わたし、ゆずになりたい」と言ってみた。母は少し笑って、「あんた、小1のころ言ってたわよ。『わたし目立ちたくてしかたがないんだよね』って」。
なんだそのマセた小1は、と思った。それに「ゆずになりたい」っていうのは「目立ちたい」っていうのとは少し違うんだけど。
でもまあいいや、と思ってわたしは足取り軽く歩みを進めた。
目立ちたくてしかたなかったらしい小1のわたしよ、あながち人間の本質は変わらないのかもしれない。あの大きなステージの真ん中で、たったふたり、ギターをかき鳴らすゆずの姿に、わたしは憧れたのだから。